2018.7.8、目標だった日帰り黒戸尾根にソウタと挑戦してきました。
日本三大急登の一つ、黒戸尾根
黒戸尾根。山歩きをしていれば、何度か聞いたことはあるはず。単純な標高差で2200mもあって、距離も長い。さらに梯子・鎖場・岩場とバラエティに富んだコース。案内看板には、山頂までの登りだけで8.5hとある。日本三大急登の一つでもある。そんなハードなコースを、トレランの方々が、信じられないようなタイムで日帰りピストンしたり、ドMな健脚ハイカーがさらりと歩いていたり。とにかく、この厳しい黒戸尾根を日帰りできる体力・走力があれば、どこだって歩けそうな、そんな気分にさせてくれる、ドM達の憧れコースw。黒戸尾根をいつか子供と日帰りで…数年前からそんな想いを抱いていた。
去年歩いた塩見岳でお会いした、克ちゃん雅ちゃんご夫婦からいただいた、激レア黒戸尾根手ぬぐいが、このチャレンジへ一気に背中を押してくれたのかもしれない。別に日帰りじゃなくてテント泊で行けば良いんだけど、そこは「黒戸尾根日帰り」にこだわりたい。ソウタと一緒に挑戦したい!そんな気持ちがふつふつと沸いてきた。W杯の熱い戦いを観て、何かに挑戦したくなったのかな。
ソウタの体力や経験を考慮すれば、たぶん問題ないはず。むしろ、最大の懸念は、おっさんの僕だったりします(涙)親の面目もあるし、置いていかれるわけにはいかぬ。
日帰り黒戸尾根、チャレンジスタート
前日夜に到着して車中泊。混むかな?と思っていたけど、天気が微妙だったせいか、車も疎ら。3時起床4時スタートと決め込んで、就寝。後ろをフラットにして枕持参で快眠快眠。テストも兼ねて、ソウタにはKids PrimaloftQuilt を使ってもらったけど、バッチリだったみたい。
微妙な天気に怯んで、4時起き4:40スタートとなりましたw
自宅出発前に、ソウタの靴がまさかのサイズアウト!去年、大き目サイズを購入して寝かせておいた靴があって良かった。新しい靴で、この黒戸尾根を歩かせるのは、ちょっぴり不安だけど…
竹宇駒ヶ岳神社。安全登山を祈願して、いざ出発。
橋を渡って、登山道へ。いよいよ始まるよ、黒戸尾根が。
実は、2回ほど引き返そうかと思った場面があった。1つ目は序盤の雨。幸い、樹林帯だったのと、それほど激しくなかったのでカッパを着て進むことにした。しばらくしたら止んでくれて、「諦めるのはまだ早い」って言われたようだった。山はつくづくメンタルだと思う。黒戸尾根で雨。人間、楽な選択をしがちだけど、持ち直して前へ。
ただ、雨が強くなり、刃渡りや梯子・岩場、稜線で土砂降りだったら即撤退と決めていた。
黒戸尾根は長い。今回はコースタイムの0.7を目標タイムに設定。まずは小屋まで、5時間を切りたいところだけど、果たして計画通り歩けるだろうか。ガスったり雨がパラついたりと不安定な天気だけど、逆に暑くならず助かっている。今日ばかりは、あまり晴れて欲しくないのが本音。とはいえ、汗っかきの僕は、もう既に滝汗w。この時点で半袖短パンなんだけど、おかしいなぁ。
4時起きで、ちょっと眠そうなソウタ。序盤は、いつものペースが出せずに、ちょっと遅れ気味。それでも、目標タイムで進んでるから良いほうなんだけど。いつものペースだったら、この区間で30分くらいは貯金できたかな。
笹の平分岐。ここから7時間ってww。考えないことにしよう。
イメージしていたよりは、緩やかなトレイル。三大急登とは言え、距離も長いので、どちらかと言えば普通に歩きやすい部類。もっと急なコースは他にもあるしね。名前とイメージが先行しちゃうけど、ずっと急な坂を登るわけじゃないよって事は伝えたい。
刃渡り
緩やかな登りが終わり、痩せ尾根になってくると、刃渡り登場。両側はスパッと切れているので、慎重に。仮想長谷川ピーク。にはならないかw。足場はしっかりしているので、余程の不注意がない限りは問題ないとは思うけど、子連れ目線で、気を抜けない最初のポイント。親の方がドキドキするw
ガスってるから高度感もないかなーと思ってたら、ここだけスーッと(笑)見えないほうが気が楽なのにね。
ゆっくり慎重に。左に滑ったら…アウトですw。もちろん右側もね。
刃渡りを無事に通過し、刀利天狗、黒戸山を過ぎ、五合目小屋跡へ。ここで200m程標高を下げるので、帰りは登り返すことになる。脚は残しておいた方が良さそう。
五合目~七丈小屋
刃渡りが1つ目の注意ポイントだとすれば、ここから小屋までが2つ目の注意ポイント。僕らには、この区間が核心部。気が抜けなかったw。肝心な写真も少ないので、余裕なかったんでしょう…
最初の長~い梯子は、まぁそんなに怖くはないです。長いけど。
1つ目のロング梯子の次の梯子群が、意外と厄介だった。写真はナシ、上の写真も関係ないんだけど、右側が谷になっていて、もちろん落ちたらアウト。梯子が岩を巻くように付いていて、岩側にはロープもあるので、しっかり掴んで、焦らずゆっくり歩けば、そんなに問題ないところ。大人ならスルーレベル。ただ、子連れ目線になると、一転、怖く思えてくる。梯子が若干谷側に傾いていて、なんというか吸い込まれそうな錯覚(笑)ソウタもそこは怖がっていた。
数えてないけど、梯子がたくさん。基本、片側が切れ落ちていて、下まで見えちゃうので、怖いんだと思う。槍ヶ岳の方が怖くなかったのは、逆に視界クリアだから、怖さを感じなかったのかな。不思議だ。写真のように、どの梯子も整備されているので、慎重に進めば問題ないのでしょう。我が家が慎重になりすぎただけかもしれない。
さて、2つ目の引き返しポイントが登場です。
五合目~七丈小屋間で、最後の梯子&鎖場のところです。
垂直に近い梯子。斜度80度と書いてあったかな。下は何もないです。谷です。4~5mくらいの長さなので、槍ヶ岳に比べると、屁でもないです。ただ、降りる時にソウタが怖がりそうだったので、念のため練習兼ねて2往復しました(笑)
問題は次です。
梯子を登った先にある、大きな岩を鎖を使って右に巻いていくところ。ソウタは自力で登れず、立ち往生。ここで引き返そうと思ったほど。でも、無抵抗で引き下がるわけにもいかず、とりあえず僕が登って、また降りて。結果、僕の太腿をステップに使えば行けることがわかりw、そうやってソウタを押し上げてクリア。でも、登ったは良いけど、降りれるか?という疑問があったので、ここも練習を兼ねて2往復w。こうやって試行錯誤と地道な努力で、無事クリアできたのです。
七丈小屋
緊張の鎖場を超え、しばらく歩いたら七丈小屋に到着(9:30)。ここまで来れたことに安堵。
小屋までのタイムは4時間46分。ほぼ目標タイム。小屋番の花谷さんにご挨拶して、この時間なら山頂行けるよなんて話をしつつ、早目のランチタイム。ここでしっかりエネルギー補給&休憩(30分)。10時に山頂に向けて出発。
黒戸尾根のお花達
長くキツイコースだけど、お花がたくさん咲いていて、ソウタも喜んでた。
ゴゼンタチバナ
シロバナヨツバシオガマかな。これ、初めて見た。
ヨツバシオガマ
イワベンケイ
ハクサンイチゲかな
タカネヒゴダイ
キバナノコマノツメ
ツガザクラ
ミヤマキンバイ?
まだ咲いてないけど、タカネヤハズハハコ
ウラジロヨウラク
ギンリョウソウ
シャクナゲ
これは?
美味しそうなキノコ
足元にカタツムリ。踏まれないように、ソウタが草むらに移動してた。
※撮影場所はランダム。他にもたくさん咲いていたけど、綺麗に取れなかったので未掲載w
七丈小屋~甲斐駒ヶ岳山頂
七丈小屋から甲斐駒ヶ岳までは距離にして約2km。600mほど標高を上げるので、言わずもがな、急である。この区間は、3つ目の注意ポイントになるけど、岩場・鎖場は、さほど難しくない印象。
小屋からしばらくは、淡々と登るだけ。ハイマツも出てきて森林限界を超えたかな。晴れていたら、さぞ綺麗な景色なんでしょう。晴れていればね。今日は景色とかどうでもよくて、山頂に立つことだけを考えてる。
剣の刺さったあの有名な岩が見えたような見えなかったような。何度か、鎖&岩場が出てくるけど、岩にステップが刻まれていたりと、さほど難しくはない。アスレチック気分で楽しめると思う。
一ヵ所だけ。この岩手前の急斜面は、下から上までそこそこ距離もあって、高度感もあって少し怖かったかな。積雪期には、滑落事故も多いポイントみたい。余裕がなくて肝心の写真はナシ、この剣の写真だけw。
子連れ目線での注意すべきポイントは、これでクリア。後は山頂まで登るだけ。
山頂手前でガスが切れて、白浜ビーチなトレイルが出現。これこそがイメージしていた甲斐駒ヶ岳。ついに黒戸尾根から山頂へ…。もう目の前だ。
11:48、甲斐駒ヶ岳(2967m)に到着!
七丈小屋からは2時間かからず。登山口からは6時間34分にて到着(休憩除く)。サブ6ならずw。でも、12時半を山頂到着リミットにしていたので、大成功と言えるかな。これなら日帰りは問題なさそうだ。途中、梯子・鎖で練習しなければ、序盤にもう少しペースが上がっていれば、サブ6は普通にいけたと思われる。それくらい、お互い余裕は残っていた。
ほんと、よく頑張った。普段、スポーツもやってないし、もちろん走ってもいない、ごく普通の小学3年生だけど、山歩きになると、底知れない脚力。いや、一番は精神力かもしれない。帰りたいとか、嫌だとか、そういった弱音を吐かない彼を尊敬するし、見習いたいところ。
ちらりと仙丈ケ岳。あそこを歩いたのは2年前。登った山から、あの山歩いたよね~って言えるのは贅沢だよね。残念ながら、北岳は雲の中だった。また歩きたいなぁ。幼稚園児が1泊で北岳~間ノ岳、あの頃からかなりハードな山歩きしてたねw
雲に浮かぶ。あれが摩利支天?
ゆっくりする時間はないので、写真を撮ったらすぐに下山開始。10分程度の滞在だったけど、その間はスーッとガスが取れてくれた。ラッキーだね。この日、北沢峠のバスが運休していたらしく、道理で人がいないわけだ。同じ黒戸尾根を登ってきた方1名と我が家だけの貸し切りだった。
下り始めたらガスってきた。この日、唯一追い抜いた2人とすれ違いざまに軽くご挨拶。テン泊装備で北沢峠に抜けるみたい。ということは、この日、黒戸尾根を歩いてた人で、僕らが最後尾か。皆さん、早くて強い人ばかりだった。
七丈小屋で花谷さんと。おじろ食堂が17時で閉まるけど、山バッジ間に合うんじゃないのって言ってくれて。流石です、花谷さん。きっちり17時前に着きました(笑)
13:30、下山開始。まだまだ先は長いぞ。
我が家的核心部である、七丈小屋~五合目の梯子群。軽く雨が降ったりして、少し濡れているのも嫌らしい。土砂降りになる前に、この区間を抜けたいところ。でも、焦ると事故に繋がるので、もどかしいけど、丁寧に時間をかけてクリア。
最大の懸念だった、あの鎖&梯子のところも、練習の甲斐あって、無事に通過。ホッとした。
最後の長梯子。でも、この手前の右に切れ落ちた梯子のところがやっぱり怖かった。帰宅後、その場所で谷に吸い込まれる夢をみたくらい(笑)子連れ黒戸尾根は、精神的負担がハンパナイってw
残す注意ポイントは刃渡り。束の間のフラットなトレイルで心を整えます。まだ気は抜けない。
梯子は続く。時間も取られるので、この区間はCTを縮められなかった。
刃渡り。気を抜いた時に事故は起こるもの。疲労はピークだし、気を抜いちゃいそうな雰囲気があれば、最後に引き締めて。雨は降りそうで降らず。最後まで味方してくれた。
蜘蛛の巣に水滴。幻想的でした。写真が下手なので、まったく伝わらないのが悔しいw
最後の難所、刃渡りを通過し、安堵。あとは、平和なトレイルを黙々と進むだけ。この辺りから、17時前に着けるかどうかギリギリだとわかったので、黙々と歩く。お互い会話もなし(笑)いつもなら、下山ペースはCTの0.5くらいで、所々走ったりするんだけど、この日に限っては、お互い脚が残っておらず断念。強い人は、ここで走るんだろうね。僕らはまだまだだ。
走らないけど(走れないw)パワーウォークで、17時を目指して最後の力を振り絞る。
そして、感動のゴーーーーール!16:50、なだれ込むように神社に到着。そのまま、早歩きで食堂に駆け込み、ギリギリで山バッジをゲット。おばちゃんがゼリーを大量にくれて、なんだか嬉しかったな。もっとゆっくりしたかったけど、営業時間内に戻ってこれただけで良しとしよう。
これにて、僕らの日帰り黒戸尾根チャレンジは終了。楽しく、つらく、長~い一日だった。でも、やり切った感、充実感はものすごい。挑戦して本当に良かった。
子連れで日帰り黒戸尾根のまとめ
目標だった子連れで黒戸尾根日帰り、無事クリア!道中、2度ほど引き返そうと思ったけど、諦めず前を向いて良かった。諦めない、弱音を吐かない、むしろ花を探しながら、楽しんで歩くソウタの姿を見て、僕は凄いなぁと唸ってしまった。難しく、厳しいチャレンジだったかもしれないけど、また一つ強くなったよね。すれ違う人に、すごい!頑張れ!と言ってもらえたことも、本人にとって、かなり自信になったんじゃないかな。
それと、成長したなーと思った場面が一つ。山頂近くの登り途中、下山中の登山者が僕らが通過するのを待っていてくれて、いつもは僕から「ありがとうございます」と言うんだけど、ソウタが先に「ありがとうございます」と言ってビックリ。登りでツライ時間帯にも関わらず、声をかける余裕があっただなんて。そんな子供の成長をとても嬉しく思えた。
下山直後は、もう子連れで黒戸尾根はやらない!精神的にキツイし、気力が持たないと思ったんだけど、時間と経つと、良いコースだったなと思えてきて、やっぱり山は不思議だ。
黒戸尾根半端ないって。めっちゃ標高差あるもん。そんなんありえへんやん普通。
いや、一番ハンパナイのはソウタかもしれない。
数値データで振り返る
参考までに
七丈小屋から甲斐駒ヶ岳山頂 108min/CT150min(短縮率72%)
登り合計:394min(6h34min)/CT550min(短縮率71.6% )
甲斐駒ヶ岳山頂から七丈小屋 75min/90min(短縮率83.3%)
七丈小屋から竹宇駒ヶ岳神社 198min/240min(短縮率82.5%)
下り合計:273min(4h33min)/CT330min(短縮率82.7%)
下りに時間がかかった。いつもなら下りでかなり貯金ができるけど、今回の黒戸尾根は、やはり危ない場所が多く、慎重に通過した結果、時間もかかったということ。あと、最後に脚が終わって、走れなかったこと。登りに関しては、序盤のペースダウンと、途中の練習時間を除けば、サブ6でいけたような。欲を言えば、トータル10時間を切りたかった。
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